法話 我等と衆生と皆共に

今年の4月にはトランプ関税の発動、能登半島地震復旧復興が進まぬまま大阪万博の開幕やカジノリゾート工事の着工、この原稿を書いております5月には米の価格は1年前の倍以上となりました。夏にはもっと高くなっているかもしれませんね。
さて、四弘誓願が年度テーマとなって四年目となり、本年度のテーマは仏道無上誓願成です。
四弘誓願は、お釈迦様のような仏様になると決意した菩薩が持つ、四つの大きな誓い願いを表したお経です。
この四弘誓願はお釈迦様の人生そのものを表していると私は感じています。
四国八十八ケ所巡りでは、各県に続く八十八か寺を四つの道場に分け、発心、修行、菩提、涅槃の道場とします。
お釈迦様の人生のように、仏様になるため発心し、修行し、菩提(悟り)を得て、涅槃(完全に安らかとなった仏様の心)へと進んでいく旅路です。
四弘誓願も、お釈迦様の人生に重ね合わすことができると思います。
衆生無辺誓願度は、出家を決意されるまでの期間(0歳から29歳)。
煩悩無尽誓願断は、出家から悟りを得るまでの修行期間(29歳から35歳)。
法門無量誓願学は、様々な人々に教えを説く期間(35歳から80歳)。
仏道無上誓願成は、長年の布教を終え死を迎えられるお釈迦様(80歳)。
お釈迦様は、人々の様々な苦しみ(老いや病や死など)をご覧になって悩まれ、この世の苦しみを克服する道を求め出家されました。
仏道の原点は苦しむ人々を救いたいという願いです。
修行で悟ったことは、苦しみの原因は煩悩(貪り、怒り、愚かさ)ということでした。
自分の今すでにある幸せを見ずに、不満や怒りの心で自分の外側にさらに求める心が苦しみの原因だと知って、自分の心をととのえることの大切さに気づき、必要以上の欲は他の人々の幸せを願う心に転換し大きな慈悲の心を起こされました。
35歳からの布教の日々で、相手に応じ様々な教えを説かれました。
老若男女、色々な職業の方、無数の悩みを持つ方々と接していくうち、お釈迦様ご自身も学ばれ、より深い智慧や慈悲の心へ成長されたのではないでしょうか。
80歳で亡くなられる頃には、この世界を知り抜いた智慧と生きとし生ける者への深い慈悲の心は完成されたものとなり、多くの人々に敬慕される方となられました。
四弘誓願は、皆の幸せを願うという仏道の初心を忘れず、自分の心をととのえながら、日々学び続ければ、私達もお釈迦様のような心になれることを説いたお経だと思っております。
私が住職をしております觀音寺は、花の寺として知っていただいております。
花好きだった先代の住職が参拝者の方にもお花を見て心を癒していただきたいという願いから、沢山花を植えました。
私はその花々のお世話のため剪定や草刈の日々を過ごしておりましたが、昨年から続く令和の米騒動、野菜価格の高騰という状況で、私は一念発起し昨年秋から畑を再開しました。
今の日本政府では、日本米は輸出用となり、安全な日本の穀物野菜を作る農家の方への補助もないと思い、家族の食生活を考えてのことでした。
修行道場での畑仕事を思い出し、昨年秋、畑を耕し鶏糞を肥料として種を蒔きました。
冬には、自然の力で大きく育った野菜を家族でいただき、「おかげさま」を実感しました。
また今年の春には畑に加え、お寺の竹林に生えた筍をこまめに掘りました。
たくさん収穫した時はご近所さんに「たくさん採れましたので、よろしければどうぞ。」とお裾分けしました。
すると、「うちは果物を植えてるから、収穫したらもらって下さい。」と言って下さいました。
筍を喜んでくれたらという思いでしたが、果物を分けてくださるというご近所同士の交流へ発展したことが嬉しかったです。
自分の家族が生きていくために十分で安全な食べ物があることはとても幸せです。
必要以上の物はお互いが分け合って助け合うというのが人間本来の生き方ではないかと改めて思いました。
自国で余った物を足らない外国へ輸出し、自国で足りない物を余った外国から輸入して助け合うのが本来の姿であるのに、相手の国の人々や文化や産業のことを思いやることなく貿易をしたり、自国の多くの国民が困っているのに一部の特権階級や外国を優先したり、この世の中はおかしくなってしまったなと思う方は多いでしょう。
四弘誓願のように法要の最後によくお唱えする普回向は、こういう一節で締めくくられます。
「我等と衆生と皆共に仏道を成ぜんことを。」
「私達も私達以外の人も皆が、お釈迦様のような心(自分自身も幸せを感じ全ての人が幸せであれと祈る心)へ成長できますように願います。」
私も早いもので五十歳になりましたが、自分の未熟さを感じる日々です。
それでも、本年度のテーマは「仏道無上誓願成」という大きな目標ですが、皆様が幸せな日々を過ごせますようにと願う仏道の初心を忘れず、お釈迦様のような穏やかで慈悲に満ちた心へ近づいていけますよう、私も皆様と共に、一日一日を新たな気持ち、謙虚な気持ちで、様々な学びをさせていただきながら、過ごしてまいれたらと思っております。
(令和7年度 推進テーマ「おかげさま 一日を新たにていねいに ~仏道無上誓願成~」
臨済宗妙心寺派 山陽教区報 山陽だより おかげさま法話 令和七年原稿 觀音寺住職)

